一字不説
読み方
いちじ ふせつ意味
仏教、とくに禅の考え方で、究極の真理や悟りは文字・言葉だけでは完全に説き表せない、ということ。釈迦は多くの教えを説いたが、真理そのものは言語化できないため、究極的には「一字も説いていない」と捉える。文字どおり、何も教えなかったという意味ではない。由来
中国の禅宗で用いられてきた仏教・禅語である。『金剛経』などに見られる、「如来の説法を固定した言葉として捉えてはならない」という般若思想を背景とする。「釈迦一代の説法は一字不説」といった形で、真理は言語を超えるという禅の立場を表した。語句そのものの成立時期・単一の原典は特定しにくいが、背景となる大乗仏教経典はおおむね1~3世紀ごろに成立し、中国禅では唐代(7~10世紀)以降に発展した考え方である。備考
主に仏教・禅の文脈で使う語で、日常会話ではまれ。単なる「無口」「説明不足」の意味ではない。不立文字と近いが、言葉を完全に否定するというより、真理を言葉に固定できないことをいう。例文
- 禅の師は一字不説の立場から、答えをすぐ言葉で教えるのではなく、弟子自身に気づかせようとした。
- 一字不説とは、仏が何も語らなかったという意味ではなく、悟りの本質は言葉だけでは尽くせないという教えである。
- 彼は沈黙のうちに茶を差し出した師の姿に、一字不説の精神を感じ取った。
類義語
対義語
- 多言多語
- 多弁多舌